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映画「告白」を見た。最後のシーンの表情について

告白

湊かなえ原作、監督

2010年日本アカデミー賞を4冠取りながら、映画芸術では2010年ワースト映画に選ばれる、賛否両論ある映画だ。

自分で楽しんで見れた。ストーリーに入り込めた。あっという間に二時間だった。

この映画の良いところは、演出面だと思う。スローモーションとセンスの良いBGMが多用され、あたかもミュージックビデオを見ているような気持になる。

唯一残念なのは殺人のシーンにリアルさがない点だ。意図的なものだと思うけれどミュージックビデオでなく映画なのだから、リアルさを追求してほしかった。

 

色々な人の感想を見ていると、否定的な理由には二つある。一つは、残酷で救いのないストーリーである点だ。見て気持ちが晴れない映画は良くないという意見が多かった。

確かに結局救いはない。だが、自分はサイコパスの少年の企みを、松たか子演じる教師がすべて見通し、復讐に利用するシーンに何かカタルシスのようなものを感じた。

 

否定的な評価の二点目はこの映画が映画的でないという点だ。

告白というタイトルからわかるように、この映画は登場人物の独白形式で物語が進む。一つのエピソードが多角的に語られる。その独白が一つ映画的でない。気持ちの説明はシーンで描写するのが基本だからだ。そのため、映画評論家や映画ファンからは毛嫌いされているのかもしれない。

 

 

■最後のシーンの松たか子の表情について考えたい

 

彼の髪をつかみあげ、般若のような顔で「ここからあなたの構成の第一歩が始まるんです」

その後、眉間のしわはなくなり笑顔になる。

画面が暗くなり、表情が見えなくなる。「なーんてね」

 

般若の顔のような彼女はまだ人間なのだ。彼を憎しみ殺してやりたいと思いながら、愛した夫の言うとおり、教育、少年の更生を考える。それは社会の一員であり、人間的だ。人間としての葛藤があの表情なのだ。

しかし、彼女は無理だった。どうしても許すことが出来なかった。

笑顔になった瞬間、彼女は人間を失くした。復讐を続ける鬼に戻ったのだ。